第2回雲南市歴史文化講座「八重滝鈩にみる田部家のたたら経営」が9月5日、掛合交流センターで開かれ、36人が参加した。講師は松江工業高等専門学校教授で雲南市文化財保護審議会委員の鳥谷智文さん。講座終了後には希望者による八重滝鈩(やえだきたたら)跡の現地見学も行われ、31人が参加した。
八重滝鈩は、江戸後期から明治期にかけて田部家が経営したたたら場の一つ。講座では、鉄の重要性やたたら製鉄の工程を解説した後、八重滝鈩の立地や操業の歴史、田部家の経営について紹介した。八重滝鈩には、砂鉄から鉄をつくる高殿と、できた鉄を実用の素材に加工する大鍛冶場が併設されており、田部家のたたら場としては特徴的な構成だったという。
明治期にたたら経営が厳しさを増す中、田部家が八重滝鈩で進めた技術開発についても説明。水量の豊富な立地を生かし、従来の天秤鞴(てんびんふいご)に代えて水車と煽風器を導入した。大量の砂鉄を早く溶かして生産量を高めるとともに、番子の人件費削減を目指した取り組みで、鳥谷さんは不景気の時代にも効率化を図る「攻めの姿勢」と紹介した。
一方で、設備改良には大きな費用が必要で、投資の回収が容易ではなかったことにも触れた。田部家は、たたら事業だけでなく新田開発や山林、流通、金融など幅広い事業を展開しており、たたら事業が赤字でも、他事業の収益によって家全体の経営を支えることができたという。
出雲市からの参加者は「田部家の経営について知りたくて参加した。たたらを始めとして当時から続いている事業が連綿と地域経済を支えているのだと感じた」と講座を振り返った。地元から参加した春日美知さんは「地元なので詳しく知りたいと思っていた。昔はここにこんな建物があったんだということも知れて感無量。講座の開催を通じて、八重滝鈩のことを皆さんにも知ってもらえてうれしい」と話した。