島根大学法文学部社会文化学科 歴史と考古コースの板垣貴志研究室が8月26日〜29日の4日間、奥出雲町で古文書調査を行った。共催は奥出雲人文ユニバース。
今回調査したのは、奥出雲町中村にある空き家を改修した「Katta House(旧勝田家住宅)」(奥出雲町中村)に保管されていた古文書。調査期間中は横田農村婦人の家(奥出雲町横田)を拠点に、史料の整理や記録作業を進めた。板垣研究室が奥出雲町で調査を行うのは今回で3回目。これまでも、旧亀嵩村役場だった亀嵩公民館(奥出雲町亀嵩)などで「旧役場文書(もんじょ)」の調査を行ってきた。
共催する奥出雲人文ユニバースは、奥出雲町出身で京都大学人文科学研究所教授の藤原辰史さんが提唱した、知の集積拠点をつくる構想を基に活動する任意団体。事務局の宍戸俊悟さんは、史料の保存や継承、価値の発信に取り組み、今後は史料を活用した展示会も考えているという。
調査には板垣さんと、学芸員資格の取得を目指す学生3人が参加した。史料がどのような場所や状態で保管されていたのかを残す「現状記録調査」を行い、写真では記録しきれない棚や箱の位置などをスケッチやメモで細かく記録した。期間中は地域住民も会場を訪れ、調査の様子を見学した。整理を終えた古文書は保存箱に収め、最終日には学生らがKatta Houseへ運び、蔵に戻して保管した。
勝田家ではかつて、たたら製鉄で栄えた絲原家の番頭を務めていた。今回の調査では、多くの情報が書き込まれ、紙を貼り継いだ「一紙物(いっしもの)」も見つかった。鉄穴(かんな)流しの担当者の任命を求める住民からの嘆願書など、たたら製鉄が当時の暮らしや地域社会に深く関わっていたことを示す史料も確認された。
板垣さんは「人口減少や空き家の増加、代替わりなどで、民家に残る古い史料が処分されることもある。そうした史料を見つけ、光を当てていくことで、歴史的な価値や意義を伝えたい。奥出雲町は世界農業遺産や米など、地域資源のブランド化にもつなげている。研究対象としても本当に多くの魅力がある地域」と話した。