雲南の老舗旅館「天野館別邸」(雲南市木次町木次)で2月25日、米子工業高等専門学校工学科建築デザインコース荒木研究室の学生による「天野館別邸調査報告会」が開かれた。主催は、総務省のふるさとミライカレッジ事業のコーディネーターを務める雲南市起業型地域おこし協力隊の小堀祥仁さん。
同館の主人・天野裕二さんによると「雲南市内には古い建築物が少なく、天野館別邸は建築から100年以上がたつ貴重な建物。市の教育委員会文化財課から小堀さん経由で登録有形文化財への登録の提案があった」と言う。「文化財の指定を受けるにはしっかりとした測量調査が必要で、ふるさとミライカレッジ事業のコーディネーターをしている小堀さんが米子高専の荒木研究室に調査をアレンジしてくれた」と振り返る。
本年度、同事業に採択された15自治体の一つとなった雲南市内では、7つの大学・高専が市内の複数地域の地域づくりに関わっており、小堀さんは早稲田大学田中研究室と街のエリアビジョンづくりなど複数のプロジェクトを担う。
米子高専の荒木研究室は建物や街の歴史を研究する「建築史」の分野の研究室で、昨年9月8日~10日、10人の教員・学生による調査を行った。建物の細かいところまで実測を行い、手書きの図面を起こし、その後、CADソフトでデジタルデータ化を行ったという。
当日の報告会には、地域の人たちや行政関係者15人以上が詰めかけ、荒木研究室を主宰する講師の荒木菜見子さんや学生の報告を熱心に聞いていた。学生は、作業の様子や苦労したこと、学んだことなどを説明。荒木さんは、別邸は大正初期に建てられたと推定できること、建築当初料亭として使われていたこと、地域の政治や経済の大物によって会食や謁見(えっけん)場所として使われていたことなどの歴史を紹介。近代和風建築としての建物の特徴、中でも意匠性の優れている多くの点について写真を示しながら説明した。
説明した学生たちは「1階と2階の柱の関係が図面に書き起こして初めて分かった。普段は自分たちで設計した建物をデジタル化したりしているが、今回は実際に立っている建物を実測してデジタル化するところで、細かなところが合わないなど苦労した」「意匠性が高いところが多くてびっくりした」「天野館の食事がおいしくて、木次の街の良さが印象に残った」などと振り返った。
報告会の後、見学会を行い、参加した地域の人たちは報告会で説明のあった意匠性の高い造りや、裏庭の上部に建てられた大正後期築と推定される茶室などを見て回った。