雲南市教育支援センター「おんせんキャンパス」(雲南市木次町平田)で11月1日、開所10周年記念式典が行われ、教育関係者や地域の人たちなど80人以上が参加した。主催は雲南市教育委員会とカタリバ。
合併により雲南市が誕生した2004(平成16)年当時、島根県の平均より不登校が多かった雲南市では不登校対策を模索していた。地域の中で学ぶ体験教育に可能性を見いだした当時の土江博昭教育長が、体験教育で関係のあったカタリバの「学校の先生でもない保護者でもない『ナナメ』の関係」の理念に共鳴し、地域自主組織を通して地域の人々の温かい受け入れができる旧温泉小学校に2015(平成27)年、官民連携型教育支援センター「おんせんキャンパス」を開設。地域に根ざした不登校支援を始めた。
文科省は2019年、「不登校支援は学校復帰よりも社会的自立が目標」との新方針を通知。不登校の児童生徒が増加し続けている状況を受け、多様な施策を打ち出してきた。一方で教育支援センターを設置している自治体は全国の74%、実際に利用している不登校の児童生徒は全国で8.4%にとどまっているという。
当日はまず同センター事業責任者の石飛紫明さんが10年の歩みを振り返り、開設からの2年間は学校との信頼関係を築くことに腐心していたこと、次の3年間は学校との連携強化により利用者が増えていったこと、2020年からの3年間はコロナ禍で社会的自立を目指すとはどういうことかを探りながら運営してきたこと、2023年以降は官民を超えた支援ネットワークの要としての役割を目指して運営していることなどを話した。
続いて卒業生が登壇し、同センターで過ごした当時の様子、同センターを通してさまざまな大人とつながり自分の気持ちを表現する機会が多くあったこと、自分が社会で働くきっかけとなったことを話した。保護者も登壇し、信頼できる大人との出会いの重要性を振り返った。その後のトークセッションに登壇した土江博昭元教育長は「社会的自立とは、人と人とのつながりの中で、社会で生き、満足のいく人生を送れるようになること。多様な人とのつながりを作っていけるようになることが、その土台となる」と語った。
同センターは現在12人のスタッフで運営。約半数が教員以外のさまざまなキャリアを持ち、高齢者の買い物支援などの地域ボランティアや地域のイベントへの出店などの地域活動に力を入れている。保護者も『ナナメ』の関係の一員となっているという。
雲南市では同センターの取り組みを通して利用者が年々増加し昨年度は68人、不登校の5~6割程度と全国平均の6倍以上のカバー率になっているという。同センターの大森伸一センター長は「学校内外で相談を受けていない児童生徒ゼロを目指している」と話す。