飯南町頓原の張戸集落で1月10日、新年を祝う奇祭「とろへい」が行われ、子どもたちが集落の家々を訪れ、清めの水を浴びせて子どもたちの無病息災を祈った。
「とろへい」は「一年の最初の満月の夜に福の神が来臨し、人々に祝福を与える」という古い民俗信仰に基づく。中国地方の山間部で昔から伝えられきており、広島県の三次市や庄原市などでは「とらへい」、鳥取県「ホトホト」、山口市「トイトイ」などと呼ばれている。
以前は張戸集落周辺の長谷集落や花栗集落でも行われていたが、これらの集落では子どもがいなくなり10年ほど前にやらなくなったという。張戸集落でも50年以上前にいったん途絶えていたが、17年前に頓原公民館の協力を得て復活させた。同集落でも今では小中学生がいなくなったため、同館が声がけし頓原小学校の児童など10人が参加した。
同集落の集会所に集まった子どもたちに、頓原公民館の石川隆さんが「とろへい」のいわれや所作などを説明。「とろとろ、とろとろ」のかけ声の練習を繰り返した。
その後、子どもたちが福を運ぶ使者となり、「とろとろ、とろとろ」と唱えながら地域の家を訪問。家の縁側に大小一対のわら馬を置き、いったん物陰などに隠れた。それを見た家の人は、お礼にお菓子などのお供え物を大きなわら馬に添えて、小さなわら馬を持って家の中に隠れた。子どもたちが出てきて、大きなわら馬とお供え物を持って帰ろうとするところへ、隠れていた家の人などが子どもたちに清めの水をかけた。清めの水にぬれた子どもは、1年間の無病息災が約束されると伝えられる。
この日は地区内外から5人のボランティアが水かけ役として参加した。両側にランタンが置かれた集落の道を歩いて、子どもたちが同集落の10戸の家を回ってわら馬を届け、清めの水を浴びた。
わら馬は、かつて農耕に使われた馬を模したといわれ、子どもの無病息災と共に農耕馬の健康も願ったとされる。