雲南市和鋼たたら体験交流施設(雲南市吉田町吉田)で10月25日・26日の2日間、「田部家のたたら吹き2025年秋季操業」が行われた。主催は「たなべたたらの里」。鉄の歴史村地域振興事業団が協力した。
田部家の先祖は室町時代にこの雲南エリアに根を下ろし、「たたら製鉄」を営んできた。「たたら製鉄」は、砂鉄を原料、木炭を燃料として、粘土製の炉(たたら)で鉄を作る日本古来の製鉄法で、この製法で生み出される良質な和鋼「玉鋼(たまはがね)」は日本刀の材料として用いられており、現代の技術でも再現不可能な純度とされる。
雲南エリアは、良質な砂鉄と炭を作るための木、炉を築く良質の土などに恵まれ、最盛時は日本の鉄需要の7~8割を供給してきた。弥生時代に日本に鉄が伝わり、「たたら製鉄」で鉄造りが始まったことで、農業などの生産性が飛躍的に高まった。鉄は庶民の生活の道具としても広く使われ、日本人の生活を支えてきた。その意味では金や銀に劣らず、世界文化遺産にふさわしいという声も聞かれる。
近代の設備を使いながら一昼夜、一般から参加者を募って行う操業は2018(平成30)年から始まり、今回で15回目を迎えた。25日13時に火入れが行われ、13時30分から神事を行い、全国から応募した参加者21人、同社の社員、同事業団のスタッフによる操業が始まった。操業に当たり、たなべたたらの里の井上裕司さんが「たたら製鉄600年の歴史と共に築かれた文化や暮らしも感じてもらい、参加者と社員の交流になれば」とあいさつした。
参加者は神事の後、鉄の歴史博物館、本物のたたらが残る菅谷たたら山内、田部家の屋敷や土蔵群を見学し、同社や同事業団の取り組みの説明を聞き、19時からは操業にも参加した。今回の操業では、26日11時の砂鉄投入終了までに砂鉄584キロ、木炭660キロを投入したという。
14時からは炉を上げて、できた鉄を取り出す「ケラ出し」を行い、参加者も燃え盛る木炭や不純物を運び出す作業を行った。「ケラ出し」が終わると、操業の無事を感謝して施設内に設けられた金屋子神の神棚に全員で拝礼した。
 この日作られたケラから後日、和鋼「玉鋼」を取り出し、同社が販売する包丁やペーパーナイフなどの製品に加工する。